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ITAMINKIA

イタミンキア イタリア語を面白おかしく学びたいをモットーに、おうまさんが運営しています。時々日本語教育の話も混ざりますが仕様です。

【感想】荒川(2016)『日本語教育のスタートライン』

日本語教師という職業に関わるようになってから、まだそんなに月日が経っているわけではないのですが、縁あって来年度からある専門学校で日本語教師養成講座を担当することになっています。おそらく、日本語学(か言語学)を担当することになるのですが、とにかくどこから始めればいいのかわからない。

というわけで、少しづづ勉強をしていかないといけないなあ、と思いまして、思い立って購入したのが、荒川洋平著『日本語教育のスタートライン』という本です。

日本語教育のスタートライン 本気で日本語教師を目指す人のための入門書

日本語教育のスタートライン 本気で日本語教師を目指す人のための入門書

 

 副題なのか、タイトルの一部なのかわからないですが、「本気で日本語教師を目指す人のための入門書」という文言もついています。「日本語教師を目指す人のための入門書」と書かれていましたが、それは、逆に「日本語教師を目指す人に何を、どういう風に教えられるか(教えるべきか)」のヒントにつながると思って、購入しました。

ということで、

 

少しこの本を読んだ印象や感想なんかを書いていきたいと思います。あくまでも「印象と感想」であって、「書評」ではありません。私のような端くれが「書評」をするなど、とんでもない、というかできません。なので、繰り返しますが、あくまでも本を読んでの「印象」と「感想」です。

  • 値段の割にボリュームが多い

この本、2500円ですが、600ページ以上あります。加えて、中身も日本語教育で押さえておくべき全ての内容をカバーしており、物理的にも内容的にもボリュームたっぷりの本だと思います。筆者は、タイトルにも「入門書」とあるように、基本的には初学者向けにこの本を書いているようですが、初学者だけでなく、私のような片足突っ込んでいる人にも読む価値がある本だと思いました。個人的には知っていることも多かったのですが、それでも、自分の理解が混乱しているな、と感じた時に戻ってくる、ある種の「辞書」としても十分機能すると思います。丁寧体で、読者に語りかけるように書いてありますから読みやすいですし、何よりも、内容を深めるための読書案内がほぼ全ての章につけられているので助かります。

この手の本を読むと、筆者のあまりにも膨大な知識量に圧倒されて、自分の小ささを実感します。「広く浅く」とは書いてありますが、これだけの分野を横断的に解説できる能力は、きっと何年たっても私には身につかないと思います。

  • 初学者には若干難しめかも...?

というわけで、買う価値がある本だったと個人的には思っているのですが、本当に初学者向けかなぁ、という印象は持ちました。ところどころ、説明がもう少し詳しくあったらいいのに、というところはありました*1。でも、よくよく考えてみると、タイトルは「本気で目指す人のための」となっているので、典型的な入門書という扱いではないのかもしれません。私が右も左もわからない頃にこの本を読んでいたら、とにかく長いので、やる気が続かず、途中で挫折していたでしょう。

また、地の文自体はかなーり平易に書かれているのですが、ところどころ出てくる表が独特なものもあって、その一部は個人的にはわかりにくかったです。

筆者が前書きで書いている通り、入門書にしては若干筆者の意見がところどころ議論を見にくくしているところもあったような気がします。

わたしは認知言語学の理念を是としてそれを勉強しているので、本書の記述のある部分は、かなりそちら寄りの書き方になっています。(p.3)

ただ、これは、何かを説明するにあたっては、ある程度の分析の立場を決めた方がわかりやすいので、仕方ないことなのかなとも思います。「まえがき」に書いてあるので心配無用かとは思いますが、本当の初学者は、分析の方法が若干偏っているということは把握していた方がいいかもしれません。

  • 本の中で迷子になる...こともあった

ボリュームたっぷりということは、その分、読者が迷子になる可能性もあるということです。日本語教育という分野を体系的に学べるようかなり配慮がほどこされているように見受けられましたが、時々自分が今読んでいるところが、全体のどの部分に位置付けられるのかがわかりづらいこともありました。せっかくなので、本の内容のロードマップ的なものが章ごとに挿入されているとよかったのかもしれません。これから読む方は、そのあたりに注意するとより読みやすくなると思います。

  • 具体的な指導方法が聞いてみたくなる

概説書なので、具体的な指導方法はあまり書いてないのですが、ちょこちょこ「指導ににうまく盛り込みたいものです」のような文言で締められるパラグラフがあったので、ぜひ、どういう活動で盛り込むのかを聞いてみたくなりました。特に文法の部分は、具体的な指導方法に関しては記載があまりなかったので、気になるところです。(自分で考えろ、というメッセージなのかもしれません。)

 

いろいろ書いてきましたが、個人的には買ってよかったと思っています。「ハッ」とさせられることもたくさんありましたし、なるほど、そういうことに注意して教えるのがいいんだ、と目からウロコな所もありました。

難しい内容をわかりやすくするための例えが逆にわかりにくかったり、急に対話形式で説明を進めたりして逆にわかりにくい、などという不満もなくはないですが、とてもいい本だと思いました。まあ、エッセイに若干寄った入門書という感じですかね。

初学者が読み物として読み通すことも十分可能だろうと思いますし、私みたいに、何かの際に戻ってくる際の参考書扱いもできる一冊だと思います。

*1:まあ、本来一冊に収まるような内容でないもものを見事におさめているので、ある程度はきりおとさなければならなかったのかも。